20-05. 画一性から多様性へ

関係性の再構築

時代の移り変わりにより、過去の価値観が役に立たなくなることはたくさんあります。

成功体験は、そこに至るまでの当時のプロセスや自己実現の歴史として意味があるものの、成功に再現性があるかといえば、疑問が残ります。社会や環境の変化を機敏に捉え、その場その場での対応を行う必要があります。

画一的な状況を受容れる人々が多かった社会から、SDGs(Sustainable Development Goals)やそのプロセスであるESG(Environment・Social・Governance)に代表されるような環境への配慮や、個人の思いや価値観、よりよい生き方を尊重し、それらを広く受け止める社会に変化してきたこともその一つです。

こうした環境変化があるなかで、組織マネジメントも大きく変化していかなければなりません。19世紀後半に発表された近代マネジメントの原点といわれるテイラーシステムから多くの経営理論が生まれ経営学は進歩し、時代の変化を取り入れてきましたが、日本の組織運営の多くは依然として画一的なマネジメントに依存しています。

SDGsやESGへの啓蒙が始まり、まずは表面的な取組みが行われるようになったいま、あるべき形への収斂を求めるのは時期尚早かもれません。

しかし、経済成長を技術革新やDXにより支えながら、環境や人の価値観を大切にしようというながれは益々強くなります。時代の変化を形式的な導入に終わるのではなく、実質的な関わりをもとうとすれば、まずは自社のマネジメント全体を見直すことが必要です。

そもそも、人の価値観は時代の変遷や社会の成熟度合いにより影響を受けたとしても、社会が人と人との関係性で成立しているとすれば、人間関係の本質は変わりません。

  1. 誠意をもって対応する、
  2. 理解し合う、
  3. 信頼し合う

といったテーマが再確認される必要があります。

肌理の細かい合理的で質の高いマネジメント

何よりも、‎ニューノーマル(社会に大きな変化が起こり、変化が起こる以前とは同じ姿に戻れず、新たな常識が定着すること=新常態)‎の時代には、これらがより一層強く求められていると考えています。

もちろん、例えば働き方改革の背景には、生産性向上への要求があり、ただ「個人を尊重し思いやりをもって働こう」といった表面的な話ではありません。

個人の多様な価値観や働き方を認めながらも、

  1. 組織の変革努力により、個人の能力を引き出し、また引き上げる仕組みや仕掛けをつくること、
  2. 個人も自分の価値をどのように高めていくか、という課題に機敏に応えていくこと、

が重要です。仕事において組織と個人が協調して新しい高付加価値を創り出す努力が求められているのです。

環境を守り、個人の価値観を尊重することと、文明の発展は二律背反するものではありません。社会の要求や個人の生き方を認めあるなかには、人類としてどのように持続性をもって社会を守り、心地よい生活をつくり出すということ、どのように進化していくのかというテーマが両立していると考えています。

マクロの話になりましたが、個々の企業は、環境問題に敏感になり社員の多様性を受容れったうえで、企業価値を高め社会貢献できるよう、内外環境に適応した組織マネジメントを行うことになります。従来のように個人の価値観を無理やり組織目標に収斂させようとするのではなく、個人の思いを尊重しつつどのように組織目標を達成していくのかを真剣に考える必要があります。

トップの柔軟な戦略立案のもと、評価システム、教育システム、役割明確化、リーダー育成、DXをどのように進め、双方が納得できる仕組みをつくり運用できるのかが、組織の盛衰を決める時代になったのです。

画一的な命令系統のなかでの組織行動が有効性を失うなか、多様な価値観をもつ社員からOne on Oneミーティング等を通じてコミットメント(約束)を引き出し、一体化することは容易ではありませんが、どのようにすれば一人ひとりの力を組織力に変換できるのかを考え続けなければならないのです。

マネジメントにおける画一性から多様性への転換が行われるよう肌理の細かい、しかし合理的で質の高い取組みが行われるよう我々も研鑽を重ねていきたいと考えています。

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