15-11.経験曲線の捉え方

経験曲線とは

累積生産量が増加するほど効率よくその仕事ができるようになり、結果としてコストが下がることをモデル化したのがボストンコンサルティンググループ(BCG)の経験曲線理論(エクスペリエンス・カーブ)です。

同じ作業を繰り返すことにより経験を積みノウハウが蓄積され、さらに仕事の仕組みを変えていくことで仕事の質が高まり、生産性が向上して業務のコスト削減につながるのは容易に理解できます。

これは製造業だけではなく、サービス業の場合も、課題解決や顧客の要求に対応した経験が社員の能力を高め、仕事の見直しにより仕事の質が向上し、同様の成果を得ることができます。なお、経験曲線は組織全体に起こる事象を説明するものであり、コスト引下げの成果は個々の組織に帰属する社員のパフォーマンスにより異なります。

暗黙知が形式知化され、また個人知が組織知化されノウハウが標準化等で組織に定着したとしても、経験を積むことができるのは社員であり、また仕事の仕組みの見直しも社員の日常的な業務改善に依存するからです。

経験曲線にいう成果が成立するためには社員により

  1. ルーチン業務を円滑に行える、
  2. 日々発生する内外課題の解決が迅速に行われる、
  3. 仕事の仕組みを常に変え環境適合できる、

という前提が必要です。組織のガバナンスが適切に行われなければならないのです。

そこで重要なのは社員の自立を促し内外連携を誘導するマネジメントです。社員がやる気になって自立することで、現状で実績を上げるとともに環境に柔軟に対応できるよう改革や創造を行えます。さらに経験を蓄積し仕組みを変えつつ現業を進化させ、連携により自立度を高め、より一層の成果を挙げていくのです。

自立せず役割を果たしきれていない社員が、従来の仕事を右往左往しながら行い、ただ時間の経過を経験と置き換えるような日々を過ごしても、そこからの高い生産性向上は望めません。

経験による生産性向上やコスト引き下げのレベルを高めるためにも常に社員の自立をテーマにしたマネジメントISM(イズム)が行われなければならない理由がここにあります。

同じ経験を積んでも、仕事に取り組む姿勢や実績とともに、やりたいことへの思いや信念、そして技術、人間力、コミュニケーション、改革に対し高い意欲をもって行動している社員Bとそうではない社員Aにより、仕事の質向上の成果が異なります。

ある時点でAとBを比較した図では、Bにコスト引き下げに対する比較優位があることが分かります。

環境整備による社員の自立を

なお、生産性は、経営資源に対する成果を意味しますが、同じ経営資源でより高い成果を生むことが生産性向上です。分母に経営資源、分子に成果を置いて計算します。例えば8時間で10の仕事をしていた社員が同じ時間で20の仕事ができるようになれば生産性は倍になります。1時間当たりのコストも半分になることが分かります。

同じ経験を積んでも早期に仕事の質を上げられる社員もいるし、そうではない社員もいます。自立する社員は上記で示す特性により経験を生かした自己変革や周りを巻き込んだ改革を行うことで、そうしない社員より仕事の質を高めることができるのは当然ですよね。

組織の経験曲線の形状は、社員の自立度のバラつきの総和であり、自立した社員の比率が曲線の角度に影響を与えています。鋭角になれば累積生産量対コスト削減比率は高くなります。生産性の高い自立する社員をできるだけ多く育成し、組織との相互関係を築けるよう環境整備を行うことが企業経営に重要であることを強く認識しなければなりません。

社員は、組織とベクトルを合わせた目標をもち自立することで、周りを巻き込みつつ努力を行いそれらを達成し続ける環境に身を置けます。やりたいことや、やらなけらばならないことができる自分をつくり達成感を得て評価されながら思い通りの人生を生きられるのです。

組織も社員も自立をテーマにどう活動すれば良いのかを考え行動する時が来たと考えています。

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