01-01. 社員にとって受容できる夢のあるビジョン

ビジョンを持つことが大切

ビジョンとは、経営者にとっては戦略の方向、社員にとれば実現したらよいと思える未来だと私は理解しています。

ただ、ビジョンがあるからといって社員がすべてそれに惹かれて入社するとは限りません。

入社するときにビジョンに共鳴して、また会社のビジョンが自分の夢であり仕事により自分の夢を叶えたいという思いをもって、入社する社員もいるでしょう。ビジョンを通じて人がつながり、価値創造が行われるようになります。

私はビジョンというよりは、選択肢もあまりなく監査法人に入社しましたし、また銀行に入行するときにも自分がやりたいことができるので応募し入社させてもらったという経緯があります。

はっきり言って二つの組織のビジョンがどのようなものであったのかは知らないままに仕事を始めた記憶があります。

もちろん、監査法人での仕事により、さまざまな業種の経営を知り、銀行では信託銀行特有の風土に支えられた多くの聡明な上司や仲間に啓発され、とてもやりがいのあるコンサルティング業務ができたので幸せでした。

当時、監査法人の仕事は、会計監査や付随するアドバイザリーに限定されていましたし、銀行においても銀行業の範囲内での仕事でしたので、リーダーの魅力や仕事の価値を感じながらも、未来にわたり意味のある何かをつくりあげていこうというビジョンはなかったのではないかとも思います。

私には、職業人としての使命感はありましたが、ビジョンがあったからといって仕事への動機が変化したとは考えていません。

仕事に勢いや創造性はあったものの制約された自由度の中で未来というより少し先を見ながらも、その時点での仕事を懸命にしていたのかもしれないという気がしています。

新しい何かをつくりあげる、ビジネスモデルを創造する、いままでにない価値をつくりあげる、といった業種であれば、別の経験ができたのかもしれないと思うと、もっとビジョンの有用性について理解していればよかったなという後悔もあります。

そうはいっても、当時は日本が成長期にある時代であったことは事実で、皆に勢いがあり、ビジョンのあり方や捉え方もそれでよかったのかもしれません(誤解のないようにいえば当時もビジョナリーなマネジメントをした多くの企業はありました)。

いずれにしても、自分のやりたいことと会社がこうしたいというものが、目の前の仕事レベルではなく、未来を示すところで一致し、その状況の実現可能性が高いリソースをもつ企業があれば、やりがいのある仕事ができる組織なんだろうと容易に想像できます。

 

自分は一体何をしたいのか、どのような価値を提供したいのか、どんな世界をつくりたいのかを考える

ビジョンをつくった時点で必要とされる資源がないとしても、それをつくりだそうとするトップがいて、呼応するように多くの社員が仕事をしている企業があれば成果は挙がります。

私はその恩恵に預かれませんでしたが、夢のあるビジョンがもつパワーを想像すると、やはりビジョンは大切だと強く思います。

夢や未来のない事業で、やる気を失わせるスパイラルに入るようなネガティブな環境であれば、社員は力を発揮できないことは明らかです。

未来を想い、ビジョンを明確に打ち出し、存在政策に昇華させ、具体的な日々の業務に落とし込むことができるトップマネジメントがあれば、どのような業種でも、どのような業態でも、きっと夢をもった仕事を社員に提供できます。

幹部を動かす社員の力も必要ですが、リーダーの設定したビジョンを達成しようという覚悟や意欲があれば、よい企業文化が形成され、高い成果を挙げられることは間違いありません。また、ビジョンがあることで目の前の出来事にぶれない、先を見据えた経営を行うことができるようになります。

自分は一体何をしたいのか、どのような価値を提供したいのか、どんな世界をつくりたいのかを考え、心底から湧き上がるビジョンをもてるリーダーが数多く出現することを望んでいます

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