[コラム]愛をもって生きる

10年以上前にシアタークリエで、「異人たちとの夏」という演劇を見ました。

演出家は、「幼い頃死別したはずの、父母とそっくりな夫婦と出会う。そして、彼らとの交流の中に、無償の愛を発見していく。同時に、新しく現れた年下の恋人との間にも、深い愛情が芽生えるのを感じる。愛に包まれ、充足感に浸り、男はついに幸福の意味を知る。だが、男にそのことを教えてくれた彼らは……”異人”であった」と説明しています。

椎名桔平、内田有紀、甲本雅裕、池脇千鶴、羽場裕一といった役者さんだちの物語です。ストーリーがわからないと見えない話ではありますが私の感じたことを説明します。
  
人は自分に対する相手の言葉や態度で何かを感じ、それに対して応え、それがまた相手の心に伝わり、それがまた…というようにコミュニケーションが行われます。

ひとつひとつの言葉や態度を大事にすることで、よい関係が築けますが、そこには愛が必要です。愛というのは相手のことを思いやること。
 
「誰かは、誰かが思い続けているかぎり生きている」と、主人公が言います。

この言葉が口をつくまでにさまざまな出来事がありますが、自分を犠牲にしても人を愛することの大切さに気付いた彼の本当の心の発露でした。

異人というのは「あの世の人」という意味ですが、何度も感動するシーンがあり、本当に久しぶりに心が洗われました。

実は昨日、織田裕二と天海祐希の「アマルフィ女神の報酬」を観ました。こちらは、確かにイタリアの名所をめぐり、美しい避暑地を舞台にするなど、きれいな映像で構成されていました。

しかし、大臣が独裁政権に資金を渡し、多くの無実の人が亡くなったことや、それを隠蔽する日本政府のODAの在り方や、外務省の大臣や奥さんの利便性を図るシーンが印象に残り、感動という代物ではありませんでした。

 

日本経済が破たんしかけているなか、研修生である戸田恵梨香に「無駄遣いをするのが外務省」的な発言をさせるなど、ストーリー自体よりも、その事実がすごく不快になる映画でした。いかにもありがちな話で、いかに日本がダメな国なのかを再確認しました。

無心に楽しめるはずの映画が、後味が悪かったのに対し、今日はシリアスななかにも温かさがあり、とても救われた感じがしました。

梅雨の東京の日中はとても蒸し暑く、過ごしづらいですが、夜の風はまだまだ爽やかで、帰り道の有楽町の街は、なぜかとても美しく穏やかににみえた記憶があります。

梅雨の時期になると、舞台そしてコミュニケーションの大切さや愛(思いやり)のことをときどき思い出します。 
[石井友二]

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