[事業成功のポイント8]謙虚になる【会員限定】
優れた成果は謙虚さから
魅力的な経営者や優れたパフォーマンスを上げているビジネスパーソンは謙虚です。
人の話をよく聞き、自分の理解したいことは納得するまで質問します。役に立つことの教えを乞うことや、短い会話のなかで気付いた琴線に触れるちょっとしたヒントをメモすることも厭いません。
謙虚とは、「控え目で、つつましいこと。へりくだって、素直に相手の意見などを受け入れること」をいいます。ここで、へりくだるとは、相手を敬って自分を控えめにすることを意味しています。
この意味からすると、謙虚をまるごと体現しているのではありません。彼らはつつましくもなく、決して控えめにしている訳ではないからです。
魅力的な経営者や優れたパフォーマンスを上げているビジネスパーソンは、成功しよう(=成果をあげよう)という強い思い(願望)をもち積極的に行動を起こしています。
なので文字通りの「謙虚な人」ではないのです。いわば「謙虚さ」をもち、「願望を成し遂げるために謙虚にもなる」というほうが適切です。
ここでもっといえば、思いを遂げるために必要であれば、どのような場面でも人から学ぶ素直さをもっているといったほうが的を得ているし、目的や目標が明確なので、目を皿のようにして成功のヒントを捜している、といったほうが現実的かもしれません。
自分がリーダーとして、あるいはミッションを達成するために率先して行動し思いを達成する、しかし、自分は一人で何かを成し遂げられない、与えられた組織や資源をどう活用するか、また、皆に能動的にどのように役割を果たしてもらうのかを考え行動するときに、そのために必要なことは全てやる。
素直になり、自分に足りないものは何なのかを考え、気付いたことはすべて受け入れようという無意識下の思いから生まれた積極性が、彼らをして素直にさせるのだと考えています。
野心と謙虚さは両立する
謙虚の反意語は横柄です。横柄は、いばって人を無視した態度をとることをいいます。横柄な経営者やビジネスパーソンで成功した人は少ないし、成功を継続させることはよほどの条件がそろわなければ難しいのではないかと思います。
もし、そうした人々が組織や事業に成功をもたらせたのであれば、
- 彼らの才能が文句のつけようなく突出していたのか、
- 彼らを必死にサポートする部下やパートナーがいたこと、あるいは
- 当該事業に対する時代の要請がとてつもなく高く、見事に彼らの行ないにヒットした、
ということなどがその条件です。レアケースですよね。
多くの場合、何かを成し遂げることの前提には「謙虚さ」が必要です。自分が成果を挙げたいときには
- 教えを乞う、
- 協力してもらう、
- 一緒に何かをする
ということが間違いなく有益です。とりわけ時代の変わりようが早く、技術革新や新しいビジネスモデルが出来上るスピードが速い今、自分や自分達だけで何かをうまくやることは困難です。
それぞれの主体が自立したうえで、どれだけうまく連携できるのか、自立と連携の時代が到来したと、私は考えています。なお、ここで自立とは、他からの支配や助力を受けずに存在することです。
他からの支配や助力をうけずに存在できるほどの力をもち、ある分野での自力の優位性を持つことができるように自分や自社を仕立て上げることが重要です。
しかし環境変化が著しい時代にあって、自分だけでは次のステップに進めない限界も知る。なので、自立した他者と連携して、新しい価値をつくりあげることが求められると考えています。
まずは自分や自社が自立する。そのうえで連携を行うためには、自分の不足するところを認め、素直にそれを取り入れることが必要です。
もちろん、ビジネスは競争です。自社や自分がすべてを取り仕切ることにより競争に勝つという考え方もあるでしょう。
しかし、一方で多くの企業や人同士が、目的達成のため素直(謙虚)にならなければならない時代であるというのが事実ではないでしょうか。
さて、ハーバードビジネスレビューにウィリアム・テイラーが、「謙虚さが大事というのに、リーダーはなぜ横柄なのか」という記事をあげています。そのなかから抜粋します。
『現実には、謙虚さと野心はけっして矛盾するものではない。むしろ、「野心をサポートする謙虚さ」は、大いなる未知にあふれた世界で大きなことを成し遂げようと志すリーダーにとって、最も効果的かつ持続可能な姿勢だ。
もう何年も前に、IBMの人事プロフェッショナルたちが、「世界を変える偉人の大多数は謙虚だと、我々は気づきました」「そうした偉人たちは、自分自身ではなく、自分の仕事に焦点を絞ります。もちろん、彼らは成功を求めます。野心的なのですから。
しかし、成功を手に入れるとき、彼らは謙虚です。自分は全能だと思うのではなく、運がよかったと考えるのです」と書いていた』。
いう内容です。
成功時に、達成感を持ちながらも「運がよかった考える」のは、皆に助けてもらったという意識の裏返しだと私は思います。
野心をもつという言い回しは日本ではあまり使われない言葉で、アメリカらしいと思いますが、結局は、「誰か」や「事業」に対し謙虚な経営者が成功している、という帰結です。
経営者だけではなく、何かの目的を達成しようとする人すべてに当てはまる重要な姿勢だということを理解しなければなりません。
「謙虚さ」をもつことは、消極的ではなく弱気でもなく、まさに積極的に願望を達成するために必要な意識であり、強い意欲の現れです。そして最終的には、人としてどのように生きていくのか、という人間性の問題なのだと思います。
自分はできているのか、できていないのはどこなのかを反芻してみようと考えています。