［コラム］忘れられた東京タワー

栄枯盛衰はどこにでもあります。栄枯盛衰は、栄えることと衰えること。栄えたり衰えたりを繰り返す人の世のはかなさをいいます。

芸能人やスポーツ選手、企業や産業もその例はあるし、インカまで遡らなくとも炭鉱の町や工業都市、鉄鋼や造船などもそう語られる対象です。

永遠に栄え続けるということは難しいし、ライフサイクルは時代や文化、思考や流行などさまざまな外的要因により左右されるので致し方ありません。

場面が変われば、また役に立つことも繁栄することもあり、物事には良い時もあるがそうでないときもあります。

ただ、たとえ表舞台にいなくとも、何かを支えていたり裏方に回り見えないところで力を発揮できると考えるのが適当です。物事すべてはそうしたものだという達観も必要かもしれません。

前提がそうだとすれば、一時期力を失ったり風向きが悪く、表舞台から引き下がるのも悪くはなと気付きます。

良いときを中心に見るのではなく、今、何かにより何らかの価値を提供していることを軸にすれば、良くなることもそうではないこともあると納得できます。

例え衰えても生きていることには変りはないのですから。

もちろん企業や産業のライフサイクルで成熟期までに次のビジネスを考えることがマネジメントの基本だとしても、状況が良くなくなったときに、臥薪嘗胆、捲土重来を考え、いつかはまた良い時期がくる、さらに力をつけて次を待つ姿勢をもって生きていくことも大切です。

繊維から食品、食品から薬品といった経過を辿り復活した企業もあるし、紡績から化粧品、花札からゲームの世界に入り大きくなった企業はつとに有名です。

脇役であるとき急に復活して皆を楽しませてくれる役者さんもいるし、歌手もいます。

隣国の韓国も、一時期は破綻の道を歩みながら大いに復活し、それを発条（ばね）として大きく復興している国だということも忘れてはなりません。

さて日本はどうでしょう。日本に栄えた時代がどれだけあったのか検証が必要ですが、皆も理解しているように高度成長時代、日本は大いに盛り上がったことは事実です。

しかし高齢化や少子化に手を打てなかったことや、時代に甘んじて本当の意味での戦略的な国家運営を行ってこれなかったことも歴史が証明しています。

多くの国民は意識してないかもしれませんが、大変な国情になっています。

貧富の差は激しく国民全体に活力がありません。先日見た雑誌に日本の生産性は先進国のなかでも下位にある、という記事が特集されていました。

日本は復活するのでしょうか、このままのたれ死んでしまうのでしょうか。

若年層人口が少なくなる現状において、我々は何をすればよいのか。どうすれば日本は復活するのかを真剣に考える必要があります。

国民には国を動かすエネルギーはなさそうですが、少なくとも個々人が自分の立ち位置で最高の成果を挙げる努力をすることは誰にでもできると思います。

例えリーダーは存在しないとしても、一人ひとりが意識を変えることは可能です。

強い思いを持ち意識をもって、誰が牽引するのではなく自らが自らを鼓舞し力を振り絞り、時代に抗う必要があるのではないでしょうか。

懸命に生きることでそれが可能であるのであれば、多くの人が既にそうしているかもしれません。ただ、まだまだやることはあるのだと思う気持ちもあります。

会食のため訪れた店の窓から東京タワーが見えます。東京タワーからスカイツリーに主役が移り、なぜか光輝いていないように見えます。

このままで良い筈はありません。

衰退したままで日本を終わらせないために、一人ひとりが立ち上がらなければならないのです。