夕暮の景色は、なぜ心をなごませるのでしょうか。
郷愁という言葉で表すと少し陳腐になってしまう、心の状態をなかなか説明はできません。
何か暖かいものに包みこまれたときのような、哀愁のある不思議な気持ちになります。
夕暮は、しばらくすると夜を迎え入れる世界の入り口であり予兆です。
昼間は自らの光でその輪郭を隠していた夕日は、そのころになると姿を現し、存在を明らかにします。
そして、命あるものが最後の瞬間光り輝くように、あたりにおしまれながら西の地平に、闇を吸い込みつつ姿を消していきます。
夜は一日の終わりを告げ、「生きとし生ける物」に静寂と休息を促す自然の摂理。世界から力を奪い、気持ちを安らかにするんですね。
夜「よる」=寄るとすれば「どこかへ向かう途中で、他の場所を訪れる。立ち寄る」ということだし、「あてにして頼る」ことでもあります。
夜を味方に自分の体を「もたせ掛ける=何かに寄りかからせる。立てかける」という、「よる」もあります。
夜には月や星が似合います。
夕暮れから徐々に夜になり、少しずつ星が点滅しはじめ、満点の星空になります。
夜空を仰ぐと満天の星があり、ここでいう「よる」が腑に落ちます。
星明りや月明りで夜道を照らしてもらい歩くことも星に頼ることだし身を持たせかけることですよね。
星空を眺めているとなぜか、安心と安らぎがあります。
夜があることで、身体を休め、命を洗い、そして夜があることで翌朝を迎え、新しい活動を始めることができます。
メリハリのある生き方ができるのも夜のお陰ですね。