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アジアの病院の運営
我々延べ5年の歳月をかけ東アジア、ASEANの64病院の調査を行った。クアラルンプールでも、マニラ(写真はマニラ、マカティのセントルーカス病院)でも、ジャカルタでもファンドや病院管理会社が経営をしている病院を数多く見た。
保険もプライベートのものや政府の職員向けのものがあったり、社会保険制度があったりと多様ななかでの医療が行われている。マニラで見たように、24時間体制で普通にいつでも病院が開いているという運営や、プライベート病院では医師が病院の正職員ではないことも、驚きではあるが、バンコクや香港でも同じようなことがあったので、これが当たり前なのだと理解している。
日本と同じ病院がその他の職員と同様に医師を常勤として雇用するシステムは北京や上海、ホーチミン、さらに他国の公的病院に見られる。ただ、これらの国々では徐々にプライベート病院が増加し、良い医師を集め、スタッフを教育し、きめの細かい医療を行うようになり、彼らが国民から高い評価を得てきていることは間違いない。
日本は財政問題から国民皆保険制度を今の形では維持できなくなるとして、海外のような多様性をもった医療システムへの転換を図るのだろうと考えている。日本にも株式会社の病院は幾つかあるが、国交省が意図するヘルスケアリートの仕組みも徐々に出来上がり、病院をサポートする時期もくるだろう。現状においても数多くの事例にみられるように、同時期に本格的な病院管理会社や私募ファンドが運営する病院数が増加していくことも予想されている。
誤解している人が多くいると思うが、海外では、プライベート病院を多数展開する営利企業の医療の質が低いという一元的な認識はない。それどころか海外のプライベート病院で受診した経験のある人であれば、逆にプライベート病院のクオリティの高さに目を見張ることだろう。
彼らは競争原理のなかで質の向上に驚愕するほどしのぎを削っており、とどまるところを知らない多くの著名病院運営企業がある。
元々日本でも、営利と非営利の違いは、配当をするかしないかの違いで、非営利は利益を出しては行けないということではない。そもそも患者の評価の証である利益が出なければ、日本の民間病院は経営を継続できないし、公的病院ですら税収が減れば資金が枯渇することは明らかである。
勿論、我々は高い診療報酬が良いといっているのではない。問題は低所得者や弱者の救済や保護の仕組みである。日本のような支援ではなく海外では弱者である国民に対し様々な支援の方法を以て対応する。特徴的なのは香港。優秀な医師が、篤志家により資金を提供されている公的病院で、一般市民や弱者に献身的に高い質の医療を行っているし、マニラでも、質の高い公的病院が、貧しい国民に比較的優良な医療を提供している。
我々が見たどの国でも、支援の仕組みがしっかりと構築され、富裕層は資金負担を行い、支援を受ける層はしっかり支援を受けられる仕組みがあるのだ。ここにすなわち、非営利や営利といった病院形態や建前や本音、自由診療や混合診療が問題ではなく、全ての国民がもつ様々な価値観や望む形で医療を受診できる仕組みがあるかどうかが問題になるのだと、アジアの医療システムを見て考える。
これからの日本の医療
なお日本のような恵まれた医療制度がないアジアの国々では総じて国民の健康意識は高い。自分の身は自分で守るという生活習慣がある。
日本は国民皆保険制度を護るためにも、国民の意識変革を促すとともに、多様な価値を受け入れ、新しい時代の医療構造を造り上げていく必要がある。
公的病院の業績改善のため民間の経営方式を取り入れる等の様々な取り組みも、また理事長の資格、配当問題、海外の医療機関支援の為の投資活動、持ち株会社などは、医療制度のあり方を模索するからこその改定であり、次の時代の医療を護るための布石だと考える。
医療や人の生き方は、センシティブな問題であり、この場で全ての課題を明らかにすることは出来ない。しかし、海外で働く多くの日本人医師が口を揃えて言うように、日本人(我々国民全員)は井の中の蛙にならず、これからの新しい日本を俯瞰して、最も望ましい医療介護のあり方、そして死生感や生き方について、良心を以て真剣に考える時が来ているということは事実のようだ。
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